開発の経緯
シ ク ロ ス ポ リ ン の 発 見
シクロスポリン(Cyclosporin)は真菌の代謝産物です。1970年、ノバルティス ファーマ社の社員が休暇先のノルウェー南部、ハルダンゲル高原から持ち帰った土の中に真菌の一種Tolypocladium Inflatum Gamsが存在していました。この菌の培養液中より11個のアミノ酸からなる疎水性の環状ポリペプチドがみつかりました。これがシクロスポリンです。
- ■ 氷河の残るハルダンゲル高原

- ■ シクロスポリン分子の立体構造

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その中のひとつシクロスポリンAに強力な免疫抑制作用があることが判明し、研究が続けられました。この物質はTリンパ球に特異的な抑制作用を持っていたため、当時、免疫の抑制が求められていた臓器移植への応用が進められました。「免疫反応を抑える。」それは、臓器移植にとって大きな壁であり、また、避けられない道でもあったのです。
臓器移植の歴史は、拒絶反応との戦いの歴史でもあります。臓器移植とは、古い臓器を新しい臓器に置き換えるという手術だけをいうのでありません。細胞レベルでは、異物の混入という現象がおこり、移植された臓器が患者さんの身体の中で正常に機能することが最終目的なのです。そのためには拒絶反応を抑えることが必須で、それを現実になしとげたのがシクロスポリンでした。腎移植ではアザチオプリンとプレドニゾロン、骨髄移植ではメトトレキサートに加えて新しい、しかも第一選択薬としてシクロスポリンは臨床の場に登場したのです。
名 前 の 由 来
- ■ サンディミュン

- シクロスポリンは当時、スイスのサンドファーマ社で開発されており、1983年Sandoz(サンド)社のimmunosuppressant(免疫抑制剤)で、「Sandimmun(サンディミュン)」という名で発売されました。サンディミュンは多くの移植(腎移植、肝移植、骨髄移植など)およびネフローゼ症候群、乾癬、ベーチェット病、再生不良性貧血などの疾患に用いられ、良好な臨床成績を治めてきました。
しかし、サンディミュンは脂溶性薬剤であったため、吸収に胆汁を必要とし、この製剤の経口投与では患者さんの状態、胆汁酸分泌量や食事の影響などにより、シクロスポリンの吸収にばらつきが見られていました。
- ■ ネオーラル

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これらの問題を解決し、安定した吸収と確実な効果を得るための新しい経口剤が開発され、Neoral(ネオーラル)と名づけられました。ネオーラルは1994年にスイスで承認され、その後世界約80カ国で承認され多くの患者さんのQOLをよりいっそう改善しています。本邦では1995年1月より臨床試験が始められ、2000年3月に承認されました。
- ■ 開発の年表
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1970年 ●ノルウェーのハルダンゲル高原土壌より真菌を分離(Thiele)
1972年 ●真菌の代謝産物に免疫抑制作用を発見(Borel)
1973年 ●Cyclosporin Aの結晶を単離
1974年 ●Cyclosporin Aの免疫抑制作用について動物実験による研究を開始(Borel)
1976年 ●シクロスポリンの免疫抑制作用を発表、リンパ球選択的であることが判明(Borel)
1978年 ●シクロスポリンの臨床試験結果を発表(腎移植:Calne、骨髄移植のGVHD:Powles)
1983年 ●スイスでサンディミュン発売。米国FDAがサンディミュン承認
1985年11月 ●本邦でサンディミュン承認(効能、効果:腎移植、骨髄移植/剤形:内用液、注射液)
本邦でサンディミュンの効能・効果、剤形の追加承認
1987年6月 ベーチェット病(眼症状を伴う場合)
1991年1月 カプセル(25mg、50mg)の発売
1991年12月 肝移植
1992年10月 乾癬
1995年9月 再生不良性貧血(重症)・赤芽球癆
1996年1月 ネフローゼ症候群
1991年9月 ●海外でネオーラルの臨床試験開始
1994年5月 ●スイスでネオーラル承認
1995年1月 ●本邦でネオーラルの臨床試験開始
●米国FDAがネオーラル承認
2000年3月 ●本邦でネオーラル輸入、製造承認
2001年6月 ●本邦で心移植の効能・効果の追加承認
2003年1月 ●本邦で肺移植の効能・効果の追加承認